メッセージ
オーボエリサイ夕ル「瞬間と永遠」から約1年、新たなリサイ夕ルシリーズをスタートします。
Hirota Oboe Laboratoryと題したこのシリーズは、今まで演奏する勇気が出なかったもの、準備が大変で手が出せなかったもの、極めてHirotaらしくないものなど選曲から演奏まで自らの固定観念や世間体を乗り越え、更にはいっさいの商業色を排除し芸術家の原点にアプローチしようというものです。
文字どおり音楽家としての可能性を拡大するための実験室というわけです。
このシリーズによりHirotaの音楽的成長を垣間見るに留まらず、聴衆である皆様と共に築き上げる空間がより意義深いもの、尊いものとなるよう願っています。そして何より自由に楽しんで頂ければ幸いです。

2002年12月


♪ Hirota Oboe Laboratoryに寄せて ♪

人の出会いとは不思議なものだ。どんなに望んでいても出会えない人もいるし、信じられないような出会いもある。袖触れ合うも他生の縁と言われる所以であろうか。そして時には実際の人に会わずしての出会いもあるのである。
 今から12年前、私はサントリーホールの最後列で日本フィルの演奏を聴いていた。オーボエの音色が好きで国内外の演奏家のCDをよく聴いていた頃だ。演奏曲目はもう忘れてしまったが、その時受けた衝撃は今でもはっきりと覚えている。そのオーボエの音はよそ見をしている私の心の奥にいきなり入り込んできて、激しく琴線をかき鳴らしていった。しかしその荒々しさに反して、響きはどこまでも気高く透きとおり、美しい。「誰?」思わず息を呑み舞台を見た。プログラムで名前を探す。オーボイスト広田智之に出会った瞬間である。それから日本フィルを聴くのがとても楽しみになり、読めもしないのにスコアを買ってきて、オーボエのパートを見ながら考えを巡らしたりもした。その後、バッハの無伴奏オーボエ・ソナタを聴いた時、演奏者の音楽に対する畏敬の気持ちや情熱、それに取り組む真摯な姿勢が痛いほど伝わってきて、自分の中にジワーッと温かいものが広がるのを感じた。
 今回のHirota Oboe Laboratory を作るきっかけとなった2002年5月に行なったコンサートでは、何より気合の入った演奏で、聴くものの心を熱くしてくれた。ファーストアルバムに収録されている同じ曲でも、CDよりはるかに艶っぽく情熱的に聴こえたのはアレンジの違いだけでは無いように思う。これからこのシリーズを重ねていく中で、彼はどんな一面を見せてくれるのだろう。そしてどのように我々をクラシックの森へ誘ってくれるのだろうか。もしかしたらもう足を踏み入れているこの森の奥には、Hirota ブランドのスペシャルシートが用意されているのかも知れない。
 

2002年12月
ローズウッド 鈴木惠子